★大学時代の、正課内外を通じた学び・経験への関与のあり方は、職業人としての初期キャリアの段階で発揮される思考行動特性とどう関係するのか?
本研究では、「大学生の学び・成長」研究の紹介で示した、正課内外の学びの架橋を促す学習・活動への関わり方(学生エンゲージメントfor LBと命名)を定量的に評価するための調査項目を検討し、予備調査の結果から、他者因子・社会因子・自律的学び因子からなる12項目の尺度を作成しました。
他者因子は「自分に対する他人からの指摘や評価をよく聞き、受け入れてきた」「様々な場面で、自分の考えが他人にうまく伝わるように試行錯誤した」など5項目で、他者の存在を介して自分自身や成果のアップデートを目指すことを示します。社会因子は「普段つき合う友人や大学のキャンパスから離れて、新しい世界にふれる経験をした」「大学以外の経験や学びの機会を、自分の関心に沿って積極的に活用した」など4項目で、日常を離れた社会との接点や周囲への影響を志向する内容です。自律的学び因子は「自分で決めたルールや習慣を一定の間継続した」など3項目で、自律的な学びや習慣の継続を示します。
こうした思考行動特性は、大学時代に正課内外の学びの架橋を促すだけでなく、職業人としての初期キャリアの段階においても、新たな能力や知識を獲得していくためのレディネスとして重要であると予想されたため、大学卒業後3~4年目の若手社会人を対象として、WEB 上でのアンケート調査を行いました。調査の枠組は上図の通りです。
同アンケートから850名分の回答を分析した結果、大学生活の他の変数と比較してみても、この学生エンゲージメントfor LB(他者因子・社会因子・自律的学び因子)が初期キャリアの思考行動特性(業務・職場で発揮するプロアクティブ行動・経験学習行動等)に対して一定の影響力をもつことが示唆されました。
また、この学生エンゲージメントfor LBが示す内容は、今後の社会で必要とされる思考行動・能力を提示した経済産業省の「人生100年時代の社会人基礎力」、OECDの「Education2030プロジェクト」の議論とも重なり合う点を多く有します。
髙澤 陽二郎
<新潟大学 経済科学部(地域リーダープログラム担当) 助教>
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