<論文など>

①高澤陽二郎・松井賢二(2021)「正課内外での複数の文脈を経験した大学生の学びの意味づけに関する探索的検討 : 大学生の成長理論に照らして」大学教育学会誌 第43巻(2), 60‐69ページ

 

②高澤陽二郎・松井賢二(2023)「正課内外を架橋するラーニング・ブリッジングの推進要因 : 学生エンゲージメントの観点で」名古屋高等教育研究 第23巻, 391-414ページ

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③高澤陽二郎・松井賢二(印刷中)「学生エンゲージメントfor LBと正課での学習経験との関係の検討」新潟大学高等教育研究 第12巻

 

 

 

★「正課の教室での学び」と「それ以外にキャンパス外・正課外で関わる諸活動」との間に、学生自身はどのような関連を見出し、自分なりの意味づけを行っているのか?

 

本研究では、条件の異なるさまざまな大学に所属する大学 3・4 年生 30 名に、1人あたり約1時間程度のインタビュー調査をオンラインで行いました。キャンパスでの授業とは異なる場面で一定程度の時間を費やして学びを得た経験をもつ学生の語りから、上記の問いを明らかにしました。

その結果、上の左図の通り、「正課の教室での学び」と「それ以外にキャンパス外・正課外で関わる諸活動」との間のつながりに学生が与えている意味づけのパターンが、学生自身の語る豊富な語彙を伴って抽出されました。1.「場面を越えた知識・スキル・態度の活用」、2.「社会・他者との関わりを通じた学習者としての基盤強化」、3.「将来のキャリアの見通しと現在の学習・諸活動との関連づけ」、4.「多様な学習資源の意味づけと主体的な選択」という4つのカテゴリーで示された内容は、大学生の成長理論が示す多様な発達を下支えする1つのプロセスとして、複数の文脈から得た知識・視点・振る舞い等を相互に関連づけるラーニング・ブリッジング(学びの架橋)が機能することを示しています。【論文①】

 

 

★(上記で示された)複数の文脈の間をつなぐ学びの意味づけを学生に促す要因は何か。それは、学び・経験へのどのような関与のあり方が影響しているのか?

 

特に米国の高等教育研究で広く扱われる学生エンゲージメントの概念を援用し、学習・活動に対する学生自身のどのような関与が上記のラーニング・ブリッジングを促しているのかを明らかにしました。インタビュー分析の結果、10の要因が抽出(上の右図:A~J)され、それを更にまとめると、1.「ある学び・活動への量的・質的に深い関わり」、2.「1つの活動の枠を越えた経験学習の実行」、3.「大学・学部内にとどまらない多様性の経験」、4.「自らが学ぶ分野の特徴の認識と関連づけ」という 4 つのカテゴリーに分類されました。

この結果から、大学生活の多くの活動場面で共通するラーニング・ブリッジング推進の基盤的要因について、一定の構造的な仮説が得られました。またこれらの要因は、学生エンゲージメント研究で提示された重要な経験や学習行動と多くが重なっており、一般的な大学生活でのアウトカムに作用する学習・活動への関与のあり方とラーニング・ブリッジング推進要因との間に相応の関連が見出されています。【論文②】

 

 

大学の学生支援環境や正課での学習経験と、(上記で示された)学び・経験への関与のあり方との間には、どのような関係があるのか?

 

上記の論文②で明らかにした正課内外のラーニング・ブリッジングを促す学習・活動への関与(学生エンゲージメントfor LBと命名)を評価する尺度を用いて、大学1・2年生169名にアンケート調査を行い、

大学の学生支援環境や正課での学習経験との関係を検討しました。

得られた重要な知見の1つは、学生エンゲージメントfor LBという概念が正課での学習経験と無関係なのではなく、相互に関連しているという点です。それはつまり、大学(教職員)の学生支援という側面においても、従来の学習支援をベースに少し視野を広げることで、より効果的な学びのサポートが可能になることを示しています。【論文③】